青のキセキ
病室の窓から外を眺めれば、満天の星空。
死のうとした夜も、同じように無数の星がキラキラと輝いていたのを思い出す。
あの時は、何もかも終わりにするつもりだったのに。
生きると決めた今、星たちの煌めきは、あの時と比べるとより輝いているように見えた。
『一緒に働きませんか』
薫さんの申し出は、とても魅力的だと思う。
実際、今の私は住む場所もなければ仕事もない。何にも無い状態で、退院した先から途方にくれること間違いなし。
退院する日も目の前に迫っている。
だけど...見ず知らずの町で生活できる...?
かといって、課長や久香の元へ帰ることは出来ない。
薫さんと葵さんが言うには、ホテルがあるのは海と山に囲まれた素敵な町だということだった。自然がいっぱいで、子育てするには最適の場所だとか。かといって、病院やスーパー、学校等もさほど離れてない所にあるらしくて不便さを感じないと言っていた。
赤ちゃんを産んで育てることは、簡単なことじゃない。でも、私はこの子と生きていくと決めた。
産むだけでなく、しっかりと育てていかなきゃいけないんだ。
そうだよ。しっかりしなきゃ。
悩んでいる場合じゃない。
薫さんと葵さんは、私の命を助けてくれたばかりか、生きる場所を与えてくれようとしている。
彼らの言葉に...甘えてみようか。
課長や久香から離れて、生活してみようか。
今の私には...それが一番いいのかもしれない。
過去を捨てる訳じゃない。過去を糧に一から始めてみよう。
新しい場所で、新しい生活を送るんだ。
一歩踏み出さなければ、何も始まらない。勇気を出して、前へ進んでみよう。
この子のために。そして、自分の為に。
私はお腹の赤ちゃんと一緒に生きていく。
課長や久香から遥か遠く離れた町で。