青のキセキ
『久香へ
ごめんなさい。
きっと、心配してくれてるよね。久香のことだから、怒ってるかもしれないね。
久香にはちゃんとお別れを言いたくてペンを取りました。
私ね、翔さんと久香が課長とのことを応援してくれて本当に嬉しかった。私は一人じゃないんだって心強くなれた。
でも、ごめんなさい。
綾さんのお腹にいる赤ちゃんから課長を取るなんてこと、やっぱり私には出来なかった。
子どもにとって親がどれ程大切な存在か、私達には痛いほど分かるよね?
私のせいで課長の家族を壊すことは出来ない。
だから、課長と別れることにしました。
綾さんの妊娠を知った時はショックだったし、神様の意地悪...なんて本気で思ったりした。バカだよね、悪いことをしているのは私なのに。
綾さんの妊娠を知って苦しんでいる課長の姿をみて、私はどうすべきなのか考えたの。
彼が綾さんを見捨てることは無いと思った。だって、綾さんは課長の家族だから。
溝が出来ていたとはいえ、綾さんが彼を支えてきたことは事実だもの。
修一さんのことがあって、でも課長は私を変わらない愛で包んでくれて私本当に嬉しかった。
修一さんの私への愛情は間違った方向へ進んでしまったけれど、最初は幸せな時期もあった。
彼のDVに脅え、耐えた日々。でも、そのおかげで、『愛』が深いものだと知ったの。
彼の歪んだ気持ちは、結果として私を傷付けることになってしまったけれど、今となっては、彼に教えられたこともたくさんある、そう思えるようになった。
それは、課長に愛されたから。課長が私を心から愛してくれたから。
課長のおかげで、私は強くなれた。課長が私に幸せをくれた。
振り返れば、過去に囚われていた私を救ってくれたのも課長だった。
修一さんに再び暴力を振るわれ、無理矢理とはいえ彼に抱かれた私を、溢れる愛情で包んでくれた課長。
そんな課長に私が出来ることは...苦しんでいる彼を解放することだと思ったの。
ただの自己満足だって分かってる。でもね、こうすることが傷付く人が一番少なくて済むんだと思った。
だから。
課長と別れることを決めた以上、久香にも会えない。もう...そこへは帰れない。
久香には翔さんがいる。一花ちゃんがいる。
家族を...愛する人たちを大切にね。
課長に、幸せをありがとうって。
こんな私を愛してくれてありがとうって。そして、さよならを言えなくてごめんなさいって伝えて下さい。
翔さんと久香には本当に感謝してる。私の親友が久香でよかった。
ありがとう。 遥 菜』