青のキセキ
【大和side】
美空に案内されてやって来たのは、美空が住んでいるという部屋だった。
和室と洋室が一つずつ、そしてダイニングキッチン。
部屋のなかは無駄な家具等もなく、こざっぱりとした印象を受けた。見渡した感じでは男と一緒に住んでいる気配は無く、ホッと胸を撫で下ろす自分がいた。
子供を布団に寝かせた後、キッチンでお茶を入れるためにお湯をやかんで沸かす美空。
さっき、美空が子供の手を引いて俺の横を通り過ぎた時。
こどもが持っていた鞄に書かれた名前が目に入った。濃紺の生地に色々な動物のアップリケがついた可愛らしいバッグ。美空の手作りだろうと簡単に推測できた。
そこに刺繍された名前。
『みそら みどり』
何気なく目にした、その文字。
あ...れ...?
そういえば。
美空は結婚したんだよな?なら、名字が変わってるはずなんじゃないのか...?
なのに、どうして『みそら』なんだ?
単純に疑問に思った。
相手の男が養子に...?
いや、美空には両親はいない。だから、美空が姓を引き継ぐ必要は、特にはないのではないか。
では、どうして...?
瞬間に思考が頭の中をかけめぐる。
トクントクン......音を立て始める拍動。
もしかして?
結婚なんてしていないのか?
でも、子供は?
一度疑問に思えば全てが疑わしくなった。