孤独の戦いと限界
〜通学路〜

『……う〜ん』


大きく背伸びをする。
一人登校は淋しいな、おまけに今日は一段と寒い。

よしっ!
俺は気合いを入れる為、孔子を取り出し、歩き読みをする。

1日を充実させる為には、何か集中する時間を、多く作るに限る。
それと、自分に関心のある本は、本当に時間を忘れさせてくれる。


〜学校〜

『(我ながら素晴らしい趣味だ!、本一冊で心を弾ませてくれる)』

既に精神は高揚して、いつの間にか学校だ。

『お…』


門に藤さんがいる。
友達待ちか‥?

門に近付くと、藤さんはこちらを凝視する‥。

何か照れ臭い…。
わざとらしくない様に、鼻歌でもしてみる。


『ふん!♪、ふふん!♪』

『…?、あの〜、昨日の方ですよね?』

『ああ、おは…』

『…鼻息が荒いですよ、大丈夫ですか?』

『…気にしないで』


精神が高揚状態だった為か、鼻歌に勢いが出た。
会話を適当に合わせる。


『えっと、藤さんだね。おはよ〜』

『おはようです♪、昨日はありがとうでした』

『俺は大した事をしてないから、あまり気にしないでいいよ』

『でもやっぱり嬉しかったですから。…?、勉強ですか?』

俺の本を見て問うてくる。でも、どうせ古すぎる本だから、わかる訳がない。


『う〜ん、暇潰しかな。勉強でもあるけど、今日は妹が一緒じゃなかったから、淋しごまかしかも…』

『妹がいてるんだね』

『いざ、いなくなると淋し…、あれっ!?』


淋しいって、なんだ!?
本音が出たのか!?


『へぇ〜、そうなんだ、妹想いなんですね』

『今のは冗談!、何でもないから』

俺は藤さんを無視し、早歩きで校舎に向かう。


『ちょ、ちょっと待って下さい』

俺の後を、小走りで追い掛けてくる。


『どうしたの?、お礼なんかいいから』

『…その、名前聞いていいですか?』

『ああ、名乗ってなかったね、宮川だよ。よろしくね』

『…下の名前も』

『優助だよ』

『ふふっ、名前通りの優しく助ける人ですね』

俺の適当な会話に、向こうは途切れさせない様に合わせてくる。

頬は、火照ってるし、まさか…。

『…惚れてないよね?』

『あっ…、そんなんじゃないですよ。その…』

『恋愛感情は突っ走らせると反動、つまり失恋のダメージが大きいよ。常に気持ちを引き返してね』

『え…?』

『あ、いや、自分の教訓だよ。気にしない気にしない』

『教訓…』

『…うん』

『…突っ走って失恋したの?』

『!!!』

俺は勢いよく振り返り、藤さんを強く見据える。
その目は、確実に怒りを灯していた。


『み、宮川君、聞いたらいけなかった?』

『その話題は、俺にとってはタブーなんだ。止めてくれ…』

『…ごめんね』

『いや、いいんだ。今の事を忘れるだけで』

『…は、はい』

『友達は多い方がいいもんね、これから宜しく』

『うん、宜しくです♪』

俺に並び歩く藤さん。
誰かを待ってるように見えたのに…。


『…?、藤さん、誰か待ってたんじゃないの?』

『誰かって?』

『校門の側で待ってる様に見えたのは気のせい?』

『‥、気のせいですよ』

『(気のせいに見えなかったけどな‥)』

『気のせいですっ』

この話題から離れたいのか、突き放した言い方で返される。

…‥


〜教室〜

『おはよー、宮川』

『おはよー』

教室に入り、クラスメイトと軽く挨拶をする。
自分の席に座り、大人しく本を読む。


『ちゃんと遅れず登校したみたいね』

『友美、いきなりそれか』

『遅刻したら、そのままサボりそうだもん』

『まぁね、そんな事より、今日の登校は淋しく感じなかった?』

『な、何朝から冗談を言ってるのよ!、寝呆けてるの?』

『その割には、詳しく質問してないのに、淋しい、の言葉だけで、よく俺の聞きたい事がわかったな』

『偶然だよ、もう!』

そこまで取り乱す事でもないのに、リアクションの大きい奴。


『あ、そうだ友美』

『何よ?』

『友美が登校した時、藤さんが校門に居てたりしたかな?』

『…なんで知ってるの?、もしかしてまだ居てたの!?』

『いや、そうじゃない。その…、朝にかわいい子が門前で待ってたらしい』

『兄さんが登校した時、藤さんはまだ校門前で待ってた?』

『…いや、俺は知らないよ。意識してなかったし』

『…そうですか』

念のために探りを入れてみたら、まさかとは思ったが…。
それにしても、朝早くから待ってるなんて…。

…‥


〜授業中〜

『くぅ〜、くぅ〜』
ZZZ…‥

『………』

ゴスッ!

『!、いってぇ』

『やっと起きたか‥、あんまり寝てると単位やれないよ』

『藤先生、後頭部がズキズキして、クラクラするのですが…』

無言で教壇に戻る。
藤先生の手には出席簿がある。
角でやられた感じだ。

友美は哀れみそうに見てるし‥。

しかし起こし方は酷いな、寝てる俺も俺だが…

…‥


〜昼休み〜

『兄さん!!』

授業が終わるといきなり俺の席の前へ立つ。

『…何だよ』

『授業中寝ないで、って何度も言ってるでしょ』

俺を想って叱ってる様だが、本当に授業は嫌いなんだよ…。

『だって勉強なんて大嫌いだもん、シクシク』

一応、泣きマネをする。


『何度も何度も、何度も何度も、注意を受けてるのに!』

『…努力するよ』

俺は教室を出て食堂に向かう。

…‥

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