【短編】『夢幻華番外編』恋人の時間(とき)
「杏、その…他の恋人たちの事は気にしなくてもいいぞ。
俺達には俺達の恋人としての過ごし方があるんだからな。」

平静を保って見せているけど内心は懇願していると言った所だろう。

杏が普通の恋人同士のような行動を取りたいと言ったらどう説得したらいいんだろう。

「暁…暁は嫌じゃないの?他の恋人同士みたいにデートしたりしてクリスマスを過ごしたいんじゃない?」

ウルウルと潤んだ瞳で見上げてそういう杏にホッとする。

愛しくてギュッと抱きしめると、零れ落ちそうな涙を拭ってやった。

「ばかだな。
俺は杏が生まれた時からずっと傍で見守ってきたんだ。
これからもずっと杏の傍にいる。俺達は二人で一つの魂を持って生まれてきたんだぞ。だから、他の恋人たちみたいに別れたり離れたりする事は絶対に無いんだ。
時間があるだけ傍にいれば良いし、デートしたいと思ったときにすれば良い。
クリスマスだからとかバレンタインだからとか他の恋人たちがイベントとしている事を無理に習ってする必要は無いんだ。わかるな?」

その言葉に杏はニッコリと微笑んだ。


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