恋の献血センター
「おめおめこんな珍しい血を逃してたまるかい」

「ああ・・・・・・。やっぱ、そこなの」

 朱美の血はRHマイナスAB。
 確かに希少価値だが、何も朱美は拒否したわけではない。
 自分から献血しにきたのだ。
 薬を盛られて、檻に放り込まれる謂われはない。

「何で自分で献血しにきたくせに、逃げたりするのよ! 初めっから逃げるつもりなんかないわよ! 出せったらこら!!」

 噛み付く朱美に、彼は、うん、と一つ頷く。

「ま、ね。それはそうだろうけど。万が一、だよ」

「献血なんて、慣れっこなんだから!」

「あれ、ちゃんと僕のこと見た? ここが単なる献血センターなわけないじゃん」

 朱美は鉄格子にへばりついて、ぎっと彼を見た。
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