恋の献血センター
 さてその使命感に燃え、献血センターへと向かっていた朱美の足が、ふと手前の小汚いビルの前で止まった。

『きし献血センター』

 あれあれ、こんなところにも献血センターが。
 いつものセンターには散々行っているので、たまには違うところに行ってみるのも面白いかも。

 そう思い、朱美はビルに足を踏み入れた。

 エレベーターで最上階へ。
 チン、という軽い音と共に扉が開けば、目の前はすでに診療所のような机と椅子。
 ぽかんとしていると、パーテーションの陰から声がかかった。

「いらっしゃい。そこの問診票に必要事項を書いて待ってて」

 若い、男の声だ。
 朱美はぐるりと室内を見渡した。
 他に客はおろか、職員の姿もない。
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