恋の献血センター
 訝しく思いながらも、見てくれはちゃんとした病院ちっくであるので、朱美は問診票を手に、長椅子に座った。
 問診票にも不審な点はない。

---ていうか、普通はカード出せば、いちいち問診票書かなくても良いのに。ま、初めてのところだし、仕方ないかな---

 各市にあるような、大きなセンターではない。
 そういうこともあるのだろう、ぐらいに思い、すらすらと票を記入する。

「書けた?」

 しばらくして、再びパーテーションの向こうから声がかかった。

「あ、はい」

 朱美が答えると、初めて声の主が姿を現した。
 白衣に黒縁眼鏡。
 なかなか整った顔の、若い男の先生だ。
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