恋の献血センター
「嬉しいなぁ。じゃ、早速ご褒美をあげようね」

 心底嬉しそうに、彼は一旦奥に引っ込んだ。
 かちゃかちゃ、と音がし、やがて良い香りが漂ってくる。

「お待たせ。はい、これ飲んで」

 手渡されたのは、コーヒーの入ったカップ。

「ありがとうございます。でも先生、献血する前は、飲まないほうが良いんじゃないですか?」

「良いんだ! さぁさぁ」

 にこにこと、半ば強引にコーヒーを勧める。
 仕方なく、朱美はこくりとカップに口を付けた。

「ああ、じゃ、用意するね。飲みながらでいいから、こっちに来て。怪我したら大変だし」

「怪我?」

「いやいや、何でもない」
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