恋の献血センター
---妙に軽い先生だなぁ。ま、むっつりしたやりづらい先生よりも良いけど---

 何せ、若く格好良い先生なのだ。
 フレンドリーなほうが有り難い。

「飲み終わったら、ここに寝ててよ」

 シャッと引いたカーテンの奥に現れたのは、診察用のベッド。
 朱美はちらりと彼を振り返った。
 その警戒心たっぷりの瞳に、彼はひらひらと、顔の前で手を振った。

「いやいや、大丈夫大丈夫。たまにさぁ、血を抜いた瞬間に、ぶっ倒れる人とかいるんだよね。危ないから、もう初めから寝ててもらってるんだ」

 そう言われれば、納得できるような。

 それでも一応ベッドに座った状態で、朱美は再びコーヒーを飲んだ。
 白衣の先生は、やけにご機嫌の体で、鼻歌を歌っている。
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