恋の献血センター
「ねぇ先生。ここって、献血センターのわりに、人が少ないですね」

「うん? そりゃあね。あんまりいたら困る」

「先生一人だから?」

「ああ、うん、そうだね」

 にこにこと応じる彼は、どこかそわそわしているようにも見える。

 コーヒーだけ飲んで、お暇しちゃったほうが良いかもな、と思い始めたころ、朱美は初めて身体の異変に気づいた。
 視界が回る。

「・・・・・・あ・・・・・・」

 立ち上がろうとし、前につんのめった朱美を、白衣の腕が支えた。

「ほら。だから言ったでしょ。座ったままだと、怪我するかもだよ」

 霞む視界に、うっすら笑みを浮かべた彼の顔。
 朱美の思考は、そこでぷつりと途切れた。
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