【完】山伏ネコの旅日記
“ぐっ…!?”
動くたびに激痛が全身に響き、傷口からは流れでた鮮血が噴き出し地面へと滴り落ちる。
“ゴォォォッ…。”
燃え盛る炎は勢いをつけて広がりオレの行く道を塞ぐ…。
右…左と痛みに堪え安全な場所を探すが、燃え盛る火柱に全て遮られて行き場を失った…。
“オレは‥帰るんだ‥。
飼い主のおばあちゃんの待つ我が家へ‥!”
オレは‥拳を握り歯を食いしばった。
諦めきれずただ気力だけで進む足を炎に運ばせた。
歩くのですらままならないというのに…それでも一歩ずつ炎の向こう側を目指し進んだ…。
“ゴォォォッー!”
炎はそんなオレのことなど…お構いなしに容赦なく襲いかかってくる。
“ニャー”
オレは…激痛と熱さに悲痛のうめき声をあげた。
それでもー。
“…オレは‥”
“飼い主のおばあちゃんが待つ…”
“…お家に帰るんだ!?”
重たい体をひきずり先に進む足に力と願いをこめ気力だけで一歩ずつ突き進む。
“ゴォォォッ…。”
炎に飲み込まれながらもオレの決心は揺るがない‥。
“オレは‥!
…大事な家族の待つ家に帰るんだーーー!?”
空高く声の限りに雄叫びをあげる。
炎はゴォーッとうねりをあげ同時にオレの体を覆い隠した。
火柱の先端より吹き出した炎の轟音に掻き消してゆく中…こだました声が微かに遠くへと響きわたり耳に届いてきた。 そのこだました方角を目指しひたすら足を進めた。