【完】山伏ネコの旅日記
木漏れ日の朝
“ピチャーン…。”
“ピチャーン…。”
水の滴る音に…ふと気がつきゆっくりと瞼をあける。
うっすらと曇った景色が視界に飛び込む…。
“カサ…。”
今度は…自分の寝ている近くで何か物音が聞こえオレの猫耳がピクリと動いた。
オレは物音の先を確かめるべく…寝たままの体勢を崩さずゆっくり顔だけあげた。
“カサッ…。”
頭上で聞こえる音の先の視線に黒い影が写り込んだ。
“あ… 。起きたのか?”
黒い影が…オレの視線に気づきゆっくりと近づいてきた。
…その影にオレは目を見張った。
“まあ…そう驚くな!
弱ってる奴を噛み殺すのは…趣味じゃないだけだ…。
いくら‥捨てられといってもそこまで落ちぶれちゃいない!”
ついこの間まで、敵として対立していた野犬は…バツが悪そうにフンッ…と鼻を鳴らした。
“助けてもらうなんて思ってなかったからびっくりしたよ”
“それは…オレ達だって同じだ…!
あの時お前が…雷雲が近づいてるのに気づいて教えてくれなかったら丸焼けになってたとこだし‥その‥なんだっけ!人間的な言い方をすれば…借りを返しただけだ!”
野犬は‥照れくさそうに強がりを言い放った。
その様子にオレは堪えきれず吹き出した。
“あははは…”
“あははは…”
突然…笑いだしたオレに野犬はふてくされていたが…お互い顔を見合わせて笑った。
オレ達の声が…こだまして響く。
雨上がりの空から…やがて光の木漏れ日が辺りを優しく包み込み朝を告げていた。