【完】山伏ネコの旅日記
“オレ…。
山を降りようと思う!”
オレは…子犬たちが寝静まった後、大人の野犬たちを集めて伝えた。
“…なんで!?
ここに来てもう少しで一年経つんだぜ!”
オスの野犬たちは口々に返した。
“今日…子犬たちに人間は…どうして飼っている動物を捨てるのか聞かれたよ…。”
“まあ‥あの子たち何だってそんな事聞いたのかしら?”
オレの言葉に‥メス犬達が首を傾けた。
“この山に人間たちが捕獲の為に来るんでしょ?”
オレの質問に野犬たちは揃ってうつむいた。
“ここに来る前に聞いた事があったんだ。
山岳には…野犬たちがいて登山に来た人間達を襲うから山には登れなくなったんだっていう話を聞いたんだ…。”
オレの言葉に別のオスの野犬が悔しそうに唸った。
“何をヌケヌケと…勝手な事いってんだ人間共は‥オレ達の集落を荒らすから追っ払ってるだけだ!”
“そうだ…!
どこまで奴ら俺たちの棲み家を奪えば気がすむんだ!
自分達の勝手で俺たちを家からここに追い出したくせに…今度は自分達でノコノコやってきて危険だから処分するだ!?
俺たちだって…この星に生きる共存者だ!
棲み家を奪う権利なんて人間だろうがなんだろうがない!”
野犬たちは…口々に人間たちに対しての恨みごとを連ねた。
野犬たちの腹に据えかねた内なる思いは長い封印から解き放たれ怒りを爆発させた。
“何か…考えがあるのか?”
野犬の一匹がオレに問いかけた。
“ここにいても…人間達には伝わらない…。
山から下山して人間たちに伝えなきゃいけないと思ったんだ…。
この場所を荒らさないことと…オレ達動物も生きているんだからちゃんと家族として大事にしてもらいたいということを…。”
オレは胸の内にある決意を語ると…それまでは野犬たちもガヤガヤ愚痴っていたけれど口をつぐみオレを見つめた。
“確かに…誰かがそうしなければいけないのかもな…。”
野犬たちの言葉に…他の野犬たちも顔を見合わせて頷いた。
“子犬たちは…大人になっても野犬のままでいい…って言ってたよ。
その言葉を聞いたら…子犬たちのためにも人間は人間のなわばりで野犬は野犬のなわばりで共存できるように伝えたいんだ…。”