【完】山伏ネコの旅日記
それが…どんなに無理なことだとわかっていても…いつか伝わるはずだ…。
オレ達…猫の祖先も…人間の祖先も昔からこの地球という星で共存してきたのだから…きっと伝わるものはある…。
“そのためには…ここにオレはいてはいけないんだ…。
まず…自分の家に帰り近所の猫に伝え…そして自分も家族をもち…またその子孫にも語りつぎたいんだ。
君たちとこうしてここで過ごして感じたことをいつか人間にわかってもらうために…。
オレは…その為に山を降りる。”
オレの決意に…周囲はしーんと沈黙の重い空気が立ち込めたが…やがて前足を交互に叩き野犬たちも夜空に遠吠えした。
“猫仙人がいうと…なんだかできるような気がしてくるから不思議だわ!”
母イヌが…にこりと笑った。
“みんな…!?
猫仙人ばかりにいい格好はさせらんないよな…!
猫仙人が…人間に伝えられなくても伝えたとしても俺たちは子犬たちのためにこの場所を守ろう!
例え…今じゃなくてもいつか人間と心から共存できる日を目標にして…!”
野犬たちは…口々に誓いをたてて頷いた。
“みんな…!そうと決まったら…猫仙人さまを…明るく見送ってあげようじゃないか!”
“賛成!?
そうと決まれば今夜は盛大に宴会だー!?”
高らかに…野犬たちの声が響いた。
夜空にまるい月が山にかかりはじめても…夜遅くまで賑やかな笑い声が高らかに鳴り響いていた。