【完】山伏ネコの旅日記
旅立ちの朝
“はっ…!?”
オレは…パッと起き上がり辺りを見回した。
“ゴォン…ゴォン…。”
激しい音をたてて洗濯機が今日も働いている。
“…ふぅ…。夢かあ…。”
目覚めの悪い夢にオレは安堵のため息をもらした。
“キュルキュル~。”
安心したらお腹がすいてくるのは…人間もネコも同じだ。
オレは…おばあちゃんが用意してくれたエサの前に移動した。
オレのエサは…飼い主のおばあちゃんが畑仕事に出る関係でいつも外に置いてあった。
腹をすかせた…野良ネコが路頭に迷ってエサを食べていくこともあるが…あの野蛮な野良ネコこそ泥集団みたいに礼儀知らずじゃない。
オレは…お行儀の悪いやつが大嫌いだ。
オレが子猫の時から飼い主のおばあちゃんにそう教えられたしつけを守っているからだ。
人間の世界も…ネコの世界にも決められたマナーを守り共存することが“美徳”でありオレ自身のこだわりだ。
それを乱す奴がオレは大嫌いだ。
腹をすかせた野良ネコは、オレに断りをいれてエサを食べはじめる。
オレも…そんなに非道ではないし困った時はお互い様だ。
だから礼儀正しく断りをいれてきた野良ネコには、横からエサを食べられても見逃している…。
しかし…あの野良ネコこそ泥集団は…別だ!
誰がいようがお構いナシ…自分達のモノじゃないくせに近づくあらゆる者に“フッー”と威嚇してはエサにむさぼりつく有り様だ。
オレは、そんな奴が許せない。
許せないから…昨日…奴らに立ち向かったんだ。
でも…奴らもダテにこそ泥を本業として鍛えているだけのこともあり俊敏な動きだ。
しかも…団体で動いているせいかずる賢さも兼ね備えているうえに何より…逃げ足が早いときている。
数匹で束になってこられたら…さすがのオレでもかなわず敗戦をしいられた。
オレは…昨日の事を思いだしきゅっ…と唇を噛み締めた。
“ニャー”
オレは…外に出るための出入口で鳴き声をあげ扉を開けてくれる者を待った。
しばらくしたら…お孫ちゃんがその声に気付き扉を開けて外に出た。