鬼祓う巫女
予言の刻




昔々、鬼と人が混同する時代。鬼と人は共存することはなく、鬼は人を食い荒らし人は鬼を祓う。そんないざこざが続き、鬼と人は互いの一族滅亡を望み、領土を統一し我が物とせんとしようとしていた、そんな戦乱の世。

予言の刻と呼ばれた月夜の晩。紅き鬼と、退魔の男は己の運命が如くぶつかり合う――



「まずは貴様からだ!」


刀から肌を通して伝わる、退魔の男の覇気。束ねられた黒く長い髪が、覇気で天へうねるようだった。退魔の男に対抗する赤き鬼は、禍々しさを増す男の覇気に顔をしかめる。金色の瞳が鋭さを増す。

覇気の禍々しさは鬼と同等、最早それ以上――!


刀のぶつかる音が漆黒の空に高く響いた。 退魔の男の凄まじさに、叫ぶように地面が唸りを上げた。妖気が溢れ、地面にヒビが入る。土埃が吹き飛び、二人の姿を隠す。土埃が雲の切れ間から月を見せるように晴れると、鬼の刀が寸前のところで男の刀を捕えていた。

「この俺が、人間に圧されるだと……?面白い。お前の―――、何処まで強くなるか見定めてやる」


鬼の邪気が一層に強くなり、周りの重力を打ち消す。足元の土や石が覇気によって浮遊した。



人知を越えた闘いに、巫女である女は手を出せずにただ見守る。伸ばせない手は胸元で願いを繋いでいた。


空に浮かぶ月は、雲に隠れている。予言の刻まであと少し。


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