鬼祓う巫女
我々、即ち高麗、百済、新羅、三人の願い。巫女である故に望まれ時には願いを叶えてきた姫巫女にとって懇願を受けるのは容易かったが、三人から願いと聞いて姫巫女は内心たじろいだ。
鬼に関係することだろうかと、考えが及んだが、高麗の言葉はどっち付かずなものだった。
「我々に命じてほしい」
何を、とも何故、とも言えず、姫巫女は高麗を見つめる。高麗もただ、真っ直ぐに姫巫女を見つめていた。面が顔を隠し定かではないが、視線はしっかりと姫巫女に注がれている。
高麗から言葉を聴くと同時落ちた日は、空に暗闇を呼んだ。朱色に染まっていた姫巫女達も青に飲まれ暗闇を吸い込んでいく。
「分かりました。その願い、聴き届けましょう」
「有り難き」
姫巫女は高麗が礼をしたのを見届けると、鬼ヶ島へと体を向ける。そして随分と離れた桃太郎の背中を追うように早足で歩いた。
桃太郎に追い付き、幾分かした後。桃太郎、新羅、高麗、姫巫女の四人は鬼ヶ島の入り口に立つ。
「全員役割は分かってるな。先ずは城の鬼に気付かれないよう鬼の住み処の雑魚どもを出来るだけ片付ける。鬼は逃がすな。残さず根絶やしにしろ。城の鬼が来たら火を放ち、混乱に紛れて城へ行く」
「御位」
「それでは行くぞ!」
桃太郎の掛け声で、一斉に入り口である洞窟へと駆け込む。
洞窟の先は暗闇で、姫巫女達は吸い込まれるようにその姿を消した。