鬼祓う巫女
「紅蓮っ!」
「姫路」
紅蓮は桃太郎の結末を見ていたが、姫路の声に振り向くと、駆け寄ってきた姫路を抱き締める。姫路も抵抗することなく紅蓮の身体を抱き締めた。
「貴方が無事で、良かったです」
「俺も姫路、お前が無事で良かった」
二人同じ想いで、強く抱き締め合う。こんなにも満たされたのは、二年前の逢瀬以来。長く求めてきた温もりを永遠に離すまいと、二人は心の中で誓った。
「戦いは終わった、のですね……」
「あぁ」
戦いは終わった。人的な被害を見れば鬼の負けだろう。しかし、桃太郎と紅蓮は決着が着かぬままとなってしまった。
人間が世界を統一するか、鬼が世界を統一するか。閻魔は討たれたが、桃太郎と紅蓮、二人の頭が残っていしまいどっち付かずなものとなった今、これからも戦乱は続くだろう。
「戦乱は、続くのですか?紅蓮、貴方はまた……」
戦わなければならないのか。
紅蓮と同じことを考えたのか、姫路は不安げに紅蓮の着物を掴んだ。そんな姫路の手に、紅蓮は己の手をそっと重ねる。
「案ずるな。戦乱の世は今宵で終わりだ」
紅蓮は高麗、新羅、百済へ身体を向けると、生き残った鬼にも聞こえるように声を上げた。桃太郎が放った火が夜の闇の中でも紅蓮を赤く染め、鬼の頭領の威圧感を醸し出す。
「桃太郎の家来よ、我等鬼は今宵より姿を隠す!この世はお前達人間が治めろ、この世が滅び行くまでな」