鬼祓う巫女
「この世を」
「我々が……」
桃太郎の傍に控えた三人は紅蓮の言葉の重みを感じとり、困惑した。
鬼が消えたとなれば人間、つまりこの戦いは桃太郎の勝ちとなり、桃太郎は祭り上げられるだろう。言わずとも桃太郎の世の統一への期待が一気に高まる。そうなれば復讐を終え疲れはてた桃太郎に、世界を背負わせることになるかもしれない。
「兄者にこれ以上背負わせるなんてダメだ……俺が、世を統一する」
「新羅……」
「憑き物を理由に捨てられけど、俺は元々力のある大名の子。桃太郎の付き人であり鬼との戦いに名を残したとあれば、父上も俺を迎えざる得ないだろ」
覚悟を決めたのか、この場で一番幼い少年は強い眼差しで紅蓮を見つめる。
「鬼の頭領紅蓮、戦乱が終わるかはお前の手にかかってる。決して世に鬼の姿影さえも残すなよ、でなければ戦乱は続くことになる!」
新羅の強気な物言いに、紅蓮はふっと笑う。
「小僧、桃太郎に伝えろ」
『生きて、足掻け』
とな。
「紅蓮、どちらに行くのですか」
桃太郎に背を向けた紅蓮に、姫路は問い掛ける。置いていかれそうな気がして怖い。しかし、追いかける勇気はない。
「人里のない山を探す。人間のお前には苦な旅だが……姫路、お前は俺が守る。俺と共に来て、俺と共に生きてはくれないか」
紅蓮は珍しく強制することはせず姫路に問い掛ける。姫路は紅蓮にもう一度駆け寄ると、紅蓮の胸に飛び込んだ。
「はい…私を、連れていってください」
もう二度とこの温もりを手放したくなどない。
もう決めたのだ。天罰が下ろうと、どんなに苦しみが待っていようと。永遠に、この鬼と共に――