鬼祓う巫女



真白の着物、肩にかかる流れるような黒髪、透き通るように白い肌。
白と黒の、美しい女の瞳が、怯えたようにこちらを見据えていた。

紅蓮は恐らく一つ二つ年が上であろう少女から目が離せずにいた。

「あなたは……誰ですか……。この辺りは久世の土地です。鬼の身体には苦しいのではないですか」


「……久世の巫女か」

身にまとう神気が彼女が普通の人間ではないことを物語っている。

しかし、この問いに返ってきたのは返事ではなく、

「うっ、ごほっ、ごほごほっ」

激しい咳。
身体をかかえ地面にうずくまる少女に、紅蓮は無意識の内に手を伸ばしていた。


「ご…ほっ…何を…ごほっ」

身を引く少女を、紅蓮はそっと引き寄せ、腕の中に閉じ込める。

「……!?」


身体を強張らせる少女の背中を優しくさする。


自分がなぜそんな事をしたのか、紅蓮は少女と同様に内心驚愕していた。

理由はわからないが、身体が勝手に動いていたのだ。



こんな風に誰かを抱き寄せることも、ましてや労るように触れることも、紅蓮は一度もしたことがなかったされたことさえもない。

身体が動いていた。
その表現しかできないくらい無意識に少女を抱き寄せたのだ。



咳が止まり、少女が息を整えるまでが紅蓮にはとても長く感じた。


そっと身体を離すと少女は不思議そうに見上げていた。

何か言おうと口を開く少女の額にある印を見つけ、紅蓮は驚愕した。


――退魔の巫女の印!!




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