神さまに選ばれた理由(わけ)
新幹線に乗ったら疲れてさすがに2人ともバタンキューで、途中、
「気を付けて帰るんだよ」という声をきいた。そうだ先生は先に降りたんだ。
走り書きが残っていて、「元気そうだから横浜迄送らないよ。それに寝てるの起こすの
かわいそうだから。楽しかったよ明日からまた元気でいられそうだ。
勇気を出して言った運命を否定されたのはちょっと悲しいけど・・・・・じゃ外来で。」
横浜に着いた。
お土産はかってない。吉野に行ったことにはなってないから。
家に着くのは10時をまわるだろう。
家族は普通だった。
「お花見はどうだった?」と下の子が聞いた。
「うん 綺麗だったよ」普通に答える。それで終わり。
男の子なんてそんなもんだ。
上の子はしゃべらない時期だし。

翌週から会社に行った。
頭の中をちらりと先生のことがよぎったが考えないようにした。
メールも我慢した。
吉野に行って1週間が過ぎた頃、つぎの外来に兄が
一緒に行くと言い出した。
私がはっきりしないから病状を
先生に聞くと言い出したのだ。
私は兄に言われて先生の都合を聞いた。
「次の外来の時OK」との返事。
「また君は同席しないんだろう?」
家族の悲しむ顔は見たくないからと言って夫のとき同席しなかった。
聞く方も本人がいない方がいろいろと聞きやすい。
とくに兄は夫と違って細かいから・・・・。
先生のメールはあっけなかった。
一緒に吉野に行ったことが嘘のようだ。
こっちは気になって仕方ない。

3回目の外来の日がやってきた。 
実兄とは新幹線口で待ち合わせた。
顔を見たら号泣するんじゃないかとわれながら
心配だったが大丈夫だった。
身内とは不思議なもので今の家族とは違う
暖かさがある。
今の家族に見せられない弱さでも
父や母や兄弟にはみせれるのだ 
昔の自分を知る安心感からなのか・・・・・・
病院では例のごとく、まず1人で近況報告して
兄への説明はそれからだった。
私はMRIの検査へ
検査から戻ると兄への説明も程なく終わった。
思ったより早かった。部屋に戻ると兄は背中を向けて
「もう、なったことはどうにもならないから、
これからのことを考えよう」と言った。
「危なくないように転ばないように
しなきゃならいぞ。会社に行くのも
ここまでくるのも危ないぞ。」と
兄の目に映るほど私の歩きはふらついてあぶなかっしいのだ。
「大丈夫よ。駅までは主人が送ってくれるし
仕事は事務所の中の仕事になったし・・・・」
「とはいってもなあ・・・・・ここまでくるのも1人じゃない方がいいぞ。
だんなについて来てもらいな」
「えー主人に!いいわよ」
「いいじゃないよ。交通事故にあっても知らないよ。ねえ先生?
「そうですね。おにいさんがそうおっしゃるのなら、ここと提携してる病院とか僕も転院できる横浜の病院さがします」
「えーまじ」思わず先生の顔を見たが・・・涼しげに笑っているだけだった。

兄がいたので吉野のことは話さず早々にきりあげた。
先生は兄と私を丁寧な言葉で送ってくれた。
「なんか頼りない先生だな・・・・ここまで来る必要あんのか?」
「まだ若いからね。兄さんの半分だもん。・・・・でもあの先生に救って
もらったことも事実。私が1番辛かったときあの笑顔に救われたのよ」
「ふーん。でもこれからの治療を考えたら、もっと頼りになる人の方が
いいと思うよ」 「・・・・そうね わかった。」
< 12 / 23 >

この作品をシェア

pagetop