神さまに選ばれた理由(わけ)
「澪さんにもう一つ話してなかったことがあるね。
僕が神経内科を選んだ理由・・・・・・・」
そう言って明け方にもかかわらず、先生 は少しもったいぶったように話始めた。
「僕はね、6年前、ある教授の講演を聞いて感動したんだ。
この人みたいな医学者になりたいと思った。
それが山田教授さ。」
「山田教授って今の病院の神経内科の部長先生?」
「そうさ。君の病院の・・・・・・
転院の話が出たとき、僕も驚いたよ。まさか山田教授がいらしゃる病院に澪さんが行くと言うとは・・・・・
山田教授ということで澪さんの紹介状は熱が入りすぎて山田教授に個人的意見まで書きすぎて
返信までもらったよ。それから何度か手紙のやり取りをして教授の元に来ないかとまで言われた。
夢のような話だった。君のおかげで夢が叶う瞬間だったのだから。
でもこの話は丁寧にことわった。
僕は今の病院で山田教授を目指す。今いる場所や患者さんを大切にしたいと思ったから。
きっとこんな僕でも頼りにしてくれてる患者さんはいる。その人たちのためにもあの病院を大事にしたいと思ったんだ。
でも澪さんのそばにはいれなくなる。でも君はきっと理解してくれる。そう思ったんだ勝手だけど・・・・
ごめん、澪さん」
「・・・先生、はっきりわかったわ。やっぱり私は神様に選ばれたの。あなたに逢うために。
先生はやっぱり運命の人・・・。」
「澪さん」私たちはきつく抱きしめあった。
「会えなくても君のこと忘れたりしないよ。治療については山田教授によく頼んでおいた。僕も行ける時は行くから」
「いいのよ。あなたはあなたの患者さんを大事にして・・・・・あの病院は私たちが出会った病院ででもあるもの。私も大事にしたい。」
「澪さん、今度生まれかわったら結婚して欲しい。絶対に僕が君を見つけるからお嫁さんになってほしい。
僕のそばで。次はお子さんにだって譲らない。僕のためだけに生きて・・・・・・・。
また病気でも僕が治すし。20歳上でもいい。ぼくらは僕らだ。それが運命。だから結婚してください。
瞬きすることも忘れた。ただひたすら涙だけが流れた。
「もうこの病気はいや。」ようやく言葉になった一言。
「わかった わかったよ 愛してる澪さん」
心が解けるような口づけだった。今世もう逢えなくても、来世逢った時にきっとお互いを間違えるはずないような口づけ。

2人は早めの朝食をとり、最後の京都観光に出かけた。。
夏を控えて街は活気をおびていた。途中で信号待ちをする間に車を停めた先生につぶやいた。
「ねえ先生・・・・・・・・・」
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