秘密の時間
「ごめん…。『おめでとう』だよね。
でも、薬指の指輪…まだしてるから…」
「……」
私の事心配して、そんな悲しい表情をしているんだね。
そう思うと私の気持ちも複雑になる
なのに私は葉子ちゃんのそんな気持ちに気付かずに、浮かれ過ぎていて。
でも、部長はあの指輪『フェイクだ』って言った。
そのフェイクの本当の意味は聞けてないけど、あの時確かに『今はフェイクだ』と部長はそう言った。
その事を葉子ちゃんにも伝えないと!
「ここじゃあちょっと話しずらい事だから、会社終わったら、飲みにでも行かない?」
有難い申し出を葉子ちゃんはしてくれた。
でも、その台詞を言う葉子ちゃんはちょっとだけ冷静さ欠いていた。
明らかに様子はおかしくて、私はそれが気になった。
「う、うん。分かった。仕事終わったら電話する」
「こっちこそ、ごめんね。なんかびっくりし過ぎちゃって…」
葉子ちゃんはそう言うと、私から目を逸らした。
なんとなくそれからは気まずい時間が流れた。