秘密の時間
観覧車から降りると、自然と手は繋がれたままになっていた。
部長より一歩後ろを歩く私は、まだドキドキと煩い鼓動を抱えたままでいる。
辺りは少しずつ闇の色を濃くしながら、夜を待ちわびている。
遊園地内も灯りが点り始め、闇の存在を助長し始めた。
「もう少し歩ける?美優…」
握られた手と同じぐらい温かさを感じる声で部長が呼ぶ。
私は足元にあった視線をあげ、彼を見つめた。
そういえば、『おまじない』って……?
聞きそびれた言葉の意味をもう一度心の中で呟いた。
けどすぐに、その呟きも打ち消されてしまう。
「このまま、帰りたくないな……」
ぼそっと呟いた彼の台詞に、ドキッとまた鼓動は暴れだす。
ねぇ、それってどんな意味があるの?
今日の部長はいつもと違い過ぎて調子が狂う。
こんなにいつも色っぽくないのに、
今日の部長は、いつもより『男』を全面に押し出し過ぎてる。
それなのに、言っている事が大人な彼には似つかわなくて…。
「あの、部長…」
「部長じゃあ、ないだろ?」