秘密の時間


ドキリと本当に音がするぐらい、私はびっくりしてしまった。



艶っぽい部長の言い回しや仕草に。



薄闇に紛れた輪郭に影が落ち、余計に妖艶さをつかさどる。


落ちつなかい鼓動の速さに、それでも部長の台詞にちゃんと応えたくて、言葉を発した。



「お…大橋…さん…」



震えた唇から零れた彼の名前を、部長は丁寧に唇で塞いでいった。



「だめだ、もう押さえ効かないかも…」



離れた唇が耳元で囁く。



いつもと違う彼の態度が、私の体温を上昇させる。



でも、この気持ち嫌じゃあない。



私も、もっと彼と一緒に居たいと思ったし、もっと触れられたい。触れて欲しいと思った。



「美優…」



その、切ない声に彼を見つめた。



そして、自然と唇から言葉は零れた。



「私も…、帰りたくないかも……」


< 124 / 306 >

この作品をシェア

pagetop