秘密の時間
「無理して先に進まなくても、まだ先は長いんだし…」
私の落ち込んだ表情に気付いたのか、部長は私を抱き寄せ優しく語り掛ける。
「で…でも…」
顔は赤いのに今にも泣きだしそうな私は、そんな彼に何も言えない。
「焦る必要はないよ。
ただ、美優がまだ怖いなら、無理強いはしたくないんだ」
「……」
優しく振れる部長の大きな手は、私の髪の毛をゆっくりと梳いて行く。
「それに、初めてならなおさら、こんな見苦しい場所よりもっといいトコ、連れてってやんないとな」
ドキッする一言を口にし、意地悪に笑う彼は、本当に私の全てを見透かしているのかもしれない。
「今日は、一緒に寝ようか」
耳元でぽつり呟いた台詞に、コクリと頷くと彼は私を抱き上げ寝室へ向かった。
そしてその晩は、軽いキスと彼の腕の中で眠りに堕ちた。
そんな私達に週明け、大きな事件が待ち受けているなんて気付かずに。