秘密の時間


「ちょっと外、いいかな?」


何も答えないで考え込んでいると、恩田さんは勝手に話を進めた。



すたすたと廊下に向かい歩き始める彼の背を目で追いながら、私も仕方なく彼の後を追った。




なんだろう?



私を連れ出す恩田さんの思惑が分からない。



ふといつもの癖で部長の席に視線を投げれば、まだそこに彼は来ていなかった。



そういえば、会議があるとか言ってたような…



いつもいる人の姿が見えないから、余計不安になる。



けど、仕方ない。




廊下に出てすぐの壁ぎわに寄りかかっている恩田さんに近づいた。



「恩田さん、ちょっとって…」




そう口にすると、スーツの内ポケットから一枚の写真を取出し私に見せる。



それを手に取りよく見てみると…



「えっ!」

「よく、写ってるよね!」


ボソッと低い声が耳元に響く。



ゴクリ、と生唾を飲み彼を見ると、薄く妖しく微笑んでいた。


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