秘密の時間


取り残された私は、放心状態のまま立ち尽くした。



ど、どうしよ……?



恩田さんが見せてくれた写真は、私と部長が写っているものだった。



それもふたりきりで…。



土曜日のデート。



たぶんあの遊園地での写真。


手をつないで歩いている仲睦まじい私と部長がそこには写し出されていた。



どうしょう……?



やっぱりこの言葉しか思い当たらない私は、なかなか今立ってる場所から動けない。


たがが写真一枚で、何がたがたしてるんだ!
なんて思うかも知れないけど、もしもこの写真がばらまかれれば、部長の地位が危うくなる。



今まで努力して築き上げた地位。


それがこの写真一枚で粉々に砕けてしまう。



だってみんなから部長は妻帯者だと思われている。



例え真実は違っても、噂は勝手に一人歩きをするもんだから…。








けど、まだこの写真は序章に過ぎなかった。



恩田さんがこの写真を私にみせ、何をしたいかなんてこの時点で私は知る由もなかった。




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