秘密の時間
意外な反応だった。
彼女がら発せられた声は、ちゃんと聞き耳をたてていないと聞こえない程。
そんな彼女をはじめて『かわいい』と俺は思った。
かれこれ残業を二時間もしてしまった。その間ずっとここで待っていたならかなり身体は冷えているはず。
もう夏の終わり。
秋風が吹く季節。
寒そうに身を縮める彼女に俺がしてやれること。
俺は自分の羽織っている上着を脱いで、そっと彼女の肩にかけた。
「えっ…」
「送ってく。もう遅いし、身体も冷えきってるだろうから…」
ごく当たり前な事を言ったつもりだか、彼女にとってはそうじゃあなかったらしい。
彼女はそっと俺の手を掴んで引き寄せた。
「せっかく待っていたんだから、少し飲まない?」
彼女は積極的に誘ってきた。