秘密の時間
店はいい具合に混んでいて、お姉言葉の男はそれっきり話し掛けて来る事はなかった。
が、彼女はなかなか帰る気配が無い。
普段の俺なら、面倒臭いと置いてかえるのだか、城田常務の妹。だからそんな訳にも行かない。
話す事もなく黙り込んだまま、時間だけがただ、過ぎて行く。
ちょうど時計の針が十時をさした頃俺は重い口を開いた。
「もうそろそろ送るよ。常務も心配するよ」
酔った彼女はトロンとした目で俺を見つめ、クフフなんて笑った。
「もう、私もいい歳の女なんだけど…」
やっぱりこの女、厄介でしかない。