秘密の時間
その言葉に肩を震わす俺に常務は優しく語り掛ける。
「大橋。大体は予測ついてたよ。
おまえらが上手くいってなかったこと。
でも、それは大橋だけが悪い訳じゃあない。咲季だっていけなかったんだ…」
どんな言葉を聞いても、とりどめなく流れる涙は止まらない。
責めるな。なんて言われても、それは無理な話。
後悔があるからこそ、そうなんだ。
もっと彼女に目を向けていれば、もっと彼女を愛していたならば、
そしたら咲季、
君はまだ俺の隣に居てくれたかな?
俯いた俺の目線の先に、常務の手が差し出された。
そして、その掌から見覚えのあるリングが出て来た。
「この指輪だけは、最後まで外せなかったみたいだな…」