秘密の時間
指輪の記憶
彼女の気持ちが死の直前まで、どこにあったかなんて俺は知らない。
知らないが、その常務の手の中の指輪は紛れもなくふたりの気持ちが重なっていたとき一緒に買いに行った物だった。
あの日結婚も決まり、ふたりでたまたま街をブラブラしていた。
その時彼女の目に留まったのは、煌びやかな宝石店。
男の俺はあまり興味も無かったが、でも彼女のキラキラした笑顔を見ていたら、彼女の願いを一つでも多く叶えていつまでもその笑顔を守りたい。そう思った。
だから彼女に誘われるまま宝石店へ入った。
そこでふたりして選んだ指輪。
俺はずっとこの指輪を付け続けていたけど、彼女は……。
そのぐらい俺達の仲は冷えきっていた。
それ以上に彼女に興味が無かったのかもしれない。
でも、この指輪が……、