秘密の時間
もしもずっと付け続けてくれていたと言うならば、俺は、俺は彼女の何を見てきたというのだろう。
ぽんぽんと俺をいざめるように肩を叩く常務に俺はやっと言葉を発する事が出来た。
「最後まで守り切れなくて、すいません…」
「いやっ、こちらこそ不甲斐ない妹で悪かった…」
その指輪はそっと常務の手に握らせ常務に返した。
少し驚いた顔をされたが、俺は首を振った。
「俺の指にはまだ填まってますんで、それは常務が持っていてください」
「……」
俺は最後まで彼女を守り切れなかった。
だから彼女の指輪を持っている権利はない気がする。
俺の指に填まっているこの指輪は俺への戒め。
俺はもうずっとひとりでいい。