秘密の時間
「美優、どうかしたか?」
自分でも気付かないうちに下げられていた視線。
そんな私の態度をどう感じ取ったかわからないが、けど、大きくて温かな彼の掌がいつもの様に私の頭を撫でる。
ただそれだけの事なのに、なぜか胸が詰まるような、そんな感じがして、私は益々顔を上げるタイミングを失った。
「美優、こっち向いて……」
仕事中には絶対耳には出来ない彼の甘い声。
その声に促される様に私は顔を上げた。
上げると同時に彼の手が私の顎にかかり、ゆっくりと唇と唇が重なる。
けどそこで思わぬ誤算が生まれて、それにいち早く気づいた彼がそっと目元にも唇を寄せた。
「美優、なんで……泣いてるの?」