秘密の時間
部長の過去
その後私達は朝ごはんも食べず、出掛ける支度を始めた。
それは巧さんの「すぐ出ようか」なんて一言から。
いつもなら何かしら口にしてから出掛けるのに、今日の彼はコーヒーを口にしただけだ。
ーー何かあるのだろうか?
不安は次から次へと芽吹いていく。
なんでなんだろ?
私は大好きな人と一緒に居られるのに。
こんなに彼は近くに居るのに、どうして不安はばかりが大きくなるの?
この気持ちが幸せだったらどんなに良かったか……。
久しぶりに巧さんの運転する車に乗り込む。
行き先は敢えて聞いていないが、巧さんからも何も言われていない。
いつもより無口な私達。
車内はカーラジオの音だけで満たされていた。