秘密の時間
このお店のオーナー足立さんに、店に入ってすぐ温かな足立さん特製スープとフレンチトーストを頼んで置いた。
それを頃合いを見計らって持ってきて欲しいと伝えておいた。
足立さんとの出合いは、土砂降りの雨の中、道端で踞って居るところを助けて貰ったのが始まり。
くしくもやはり出合いのきっかけは咲季だった。
咲季を喪ってからの俺は、休みのたびにこの場所に足を運んでいた。
今更こんな事しても、もう咲季は戻らないが、それでも気が付くといつもこの場所に俺は立ってた。
けど、ここに来たからと行って、特に何かをしていた訳じゃあない。
ただ、日が暮れるまで俺はぼんやりと海を眺めていた。
咲季とはそれこそちゃんとしたデートなどした事なくて、彼女がいなくなってからそんな事に気が付いた。
咲季の事ばかり考えていた訳ではなかったが、気が付くと咲季の事を思っていた。