秘密の時間


俺はその台詞を聞き固まった。



でも、普通ならそう思うか。



咲季は男と一緒だった。



まさか俺が、その男の隣にいた女の旦那なんて夢にも思わないだろう。



そんな動きを止めた俺に足立さんは何かを感じとって、俺の目の前にあるスープを勧めた。



「……立ち居ったらいけない事もあるよな。

まぁ、冷めないうちに飲みなさい。お腹も満たされれば、少しはまともな考えも出来るだろうから」


「………」




まとも?



足立さんに言われた台詞に引っ掛かる所はあったが、とりあえず俺は目の前にあるスープのカップに手を添える。



その温かさに自分の身体が冷えきっていたことを自覚した。



足立さんの言うように、スープを一口啜ると少しだけ滅入っていた気分もだいぶ楽になる。



そして俺は、知らず知らずに足立さんに色々な事を話し出してた。



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