秘密の時間



足立さんのスープに口を付けた美優は、さっきと様子が変わった。



やっぱり、足立さんの作るスープは人の心を落ち着ける作用でもあるのだろうか?



俺は彼女がカップをテーブルに戻すまでずっと見守っていた。



「……少しは、落ち着いた?」


「……えーと、はい」



少し他人行儀な返事だったが、それでも幾分表情は和らいでいる。



「俺も、このスープに救われたんだ」


「………」



「美優も同じだったら嬉しいよ」




それから俺達は無言のまま、足立さんの作ってくれた料理にありつく。




足立さんの料理がこんなに心にしみるのは、足立さんも同じ様な経験をしてるから。



足立さんは多くを語ってはくれなかったが、ただ、俺の気持ちを理解し俺の背中を押してくれた足立さんにはいくら感謝しても感謝しきれない。




俺は美優を見詰めながら、この場所にも、足立さんにも、そして咲季にも、美優をちゃんと幸せにすることを誓った。



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