秘密の時間
食後にコーヒーを呑みながら、俺はいつ渡そうかとそわそわしていた。
ジャケットのポケットに手を入れると触れる四角い箱。
まだ不安げな顔の美優に、俺はいつ渡したらいいのかずっとチャンスを狙っていた。
でも今は、何だか渡す時ではない気がする。
やっぱり女の子だから、何かの記念日なんかに渡した方が良かったのだろうか?
あまりいい恋愛経験をしていない俺はこういう時、本当に困る。
何度『もっと気の利いた言葉をあげられないんだろうか?』なんて悩んだ事は数知れず。
こんな俺でも本当に美優を幸せにしてあげられるのか、不安が胸をせしめる事もある。
けどやはり、美優とはどんな事も乗り越えていきたい。
中途半端な気持ちで美優と今まで一緒にいた訳じゃあない。
「美優、あのさ……」
俺はもう一度勇気を振り絞って美優に声を掛ける。
さっきはマスターに邪魔されたけど、今度こそ伝える。
俺の今の気持ちを。