秘密の時間


「もう泣くな。明日、目が開かなくなるぞ」


なんて言いながらそっと指先で涙を拭ってくれる。



そう言えば、なんで部長は私に親切なんだろ?



どちらかと言えば鈍臭い子だし、仕事もろくに出来てないし、とにかくダメダメちゃんなのに…。



そんな事考えながら部長を見つめていると、急に部長の胸元が近づいた。



そしてかわいい、チュッという音がして、おでこに少しだけ違和感を感じた。



えっ!



声にならない驚きと、次の瞬間あり得ないほど近づく部長の胸元。



ほんのり薫る部長の香水の香りに、ドキッと鼓動は高鳴った。



「てーか、美優が悪い…」

「……」



部長の小さな呟きが何となく切なくて、胸がキュンとする。



「ぶ…部長、今、私に…」


キス…しましたよね!








「ふたりだけの、内緒な」


< 29 / 306 >

この作品をシェア

pagetop