秘密の時間
ああ、呆れられてる。
そう思うと勝手に涙が滲んでくる。
それを隠すように俯いた。
ああ、また部長の前で泣いてる…
色々な思いが交ざりあってどうしていいかすら分からない。
涙の止め方も…。
「ああ、悪い。アレもういいや。
あの資料は、実在しないし…」
「……」
えっ!
どういう事?
顔を上げて、部長を見る。
バツ悪そうにそっぽを向く部長は、唇を尖らせて拗ねてるみたい。
そんな新たな発見に、涙もどこかへ引っ込んだみたいだ。
「悪かったな。中村…。
黒澤さんの悪い癖なんだよ。その…、新人の女の子に雑用ばかり頼むの…」
「……」
ちなみに、黒澤さんとはあの先輩おじいちゃんのこと。
「もう何回も注意してるんだけど、なかなか直らなくてね。
まぁ、俺から仕事頼めば黒澤さんもそれ以上は言えないから…。
もっと早く気付いてやれば良かったのに、気付けなくて悪かった」