秘密の時間
慌てデスクに向かう恩田さんに、クスリと小さな笑みを湛える彼は私の真横に立った。
「中村、俺にもコーヒー」
肩をぽんぽんと叩いて私を追い越してく彼。
この会社では一番の出世頭で、纏う雰囲気といい、身のこなしといい、申し分ない人物。
だから、社でこの人を知らない人なんて絶対いない。
そのぐらい有名は部長は、こんな下っぱな私ですらこうやって助けてくれる。
そんな部長の背中を見つめていると…
「中村さん、早く」
なんて声が先輩おじいちゃんから聞こえてくる。
「は、はい。今お持ちしまーす」
だけど、私、お茶汲みするためにこの会社に入った訳じゃあないのに…