秘密の時間
また、いつの間にか名前で呼ばれてる…。
そんな事思いながら、それでも視線を逸らす事無く部長を見続ける。
不意に部長の指先がすっと目の前に現れ、私の頬をゆっくりと掠めてゆく。
「なんか、いつも美優は…泣いてるね」
いつの間にか目の端っこに零れていた雫。
温かな指先が離れた瞬間、掬われた雫はその指に絡め取られる。
そんな部長の突然の行動に、何も言えず固まっていると部長の手は私の頭を撫でてから離れていった。
「それ飲んだら、帰りなさい。
お疲れ、美優…」
「…お、お疲れさまです」
やっと返せた言葉は、なんだか慌ただしく飛び出した帰りの挨拶で、
それでも、また『美優』なんて呼ばれてしまい、うれしさを隠しきれなくなりそうだった。
う…うれしい?
またまた新たに気持ちに気が付いた瞬間だった。