秘密の時間


「まったく、こんなに呑まされるとは…」


ぼそっと呟いた部長の台詞が、部長の胸を通し私の耳に伝わる。


離れなきゃ。と思うのにどういう訳が身体が動かない。



そっと髪の毛を撫でられぴくっと揺れる身体。


そっと肩に添えられた手が私を部長から剥がしていく。


「二次会、行かなくて正解だな」

「部長?」

「ほら、帰るぞ!」



部長が私に背を向ける刹那、私の手をギュッと掴む。

びっくりして身体が引けるのに、それでも構わず私の手を引いた。


「あのー…、部長?」

「また、転ぶのか?

美優は意外とドジなんだな…」


最後の台詞は聞き捨てならないが、それでも温かな手に包まれて気持ちまで温かくなって…、だからそれ以上何も言わず部長に従い店をでた。


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