秘密の時間

店を出ると当然の様に、部長はタクシーを拾う。


「あのー、部長。

まだ終電間に合うので、私電車で…」



言い終わらないうちに、目の前にタクシーが止まる。


「ほら、乗れ！」

「…部長？」



部長の意外な口振りに顔を見つめると、部長が強引に私をタクシーに押し込む。


私と部長を乗せたタクシーは、私の住む部屋を目指して走り始める。



「あのー、部長。家と部長の 家って…」


逆ですよね？

そう言うとした時、部長が遮った。



「『送ってく』って、言っただろ？


それに、そんな美優の姿、他の奴に見せたくない…」


最後の方は聞き取りにくくゴニョゴニョになりながらも、そう言った部長は私から顔を背けた。



それよりも、


暖かな車内は余りにも心地よくて、目蓋はいつの間にか勝手に落ちてくる。



でも、ここで寝てしまっては部長に迷惑かけてしまう。


そう思うのに、目蓋はゆっくり……。


「おい、中村！おい！！美優！」


私の家に程近い場所についた頃
私は部長に揺さ振り起こされていた。



いつの間にか寝てしまったみたいだ。