秘密の時間


「これで、いいかな?」


と部長は温かいミルクティーをカゴに入れた。


そして自分の分のブラックのコーヒーも。



「あのー、なんで部長私がミルクティー好きだって知ってるんですか?」



不思議だった。

なんで部長はミルクティーを手にしたか?


「おい、忘れたのか?いつだったか奢ったの」


あっ…、思い出しそうで思い出せない!


悔しいけど…でも、部長がそんな些細な事を覚えていてくれた事が嬉しかった。


「肉まんとかあんまんもあるぞ。チーズまんか…」


レジ横の温かな食べ物が入ったケースの前で悩み始める部長。


仕事中見せないそんな姿にドキドキもしたけど、ちょっとだけ微笑ましかった。




結局、チーズまん二個とそれぞれの飲み物を買いコンビニを出ると、私達を冷たい風が包んだ。



「そういえば、中村の家何処なんだ?」


今更のように口にした台詞に、嫌な汗が背中をつたう。



えーと、どうしよ…?


もう通り過ぎてるし、ましてやタクシー降りた真ん前のアパートでした。なんて言ったら…。


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