秘密の時間
名刺を拾い上げじっくり眺めた後、葉子ちゃんはニンマリ笑ってこう言った。
「掛けちゃおうか!?」
「えっと、『掛ける』って…?」
「決まってるでしょう!小山課長の携帯に!!」
葉子ちゃんはこの瞬間から水を得た魚みたいに元気になった。
さっきはあんなに悩んでいたのに、まるでそれが嘘の様に。
「さぁ、美優。携帯貸して?」
「葉子ちゃん…」
そんな葉子ちゃんの行動を見て、私は足がすくむ思いがした。
ああ、聞くんだ。部長の事。
そしたら、私の気持ち課長にばれない?
ばれたら私、どうしたらいい?
片思い体質の私が、こんな行動起こした事がなくて困惑の色を隠せない表情を露にしていると、葉子ちゃんはじぃーっと私を見つめた。
「あのさ、美優…、怖がらないで!」
「……」
「このままじゃあ、何時までもウジウジ悩むんだよ!部長はきっとみんなの上司だし、きっとまた今日みたいに美優は泣くんだよ!」
また…泣くの?
今日みたい…に。
その台詞だけが、耳から離れなかった。