秘密の時間
はい、なんてにっこりとした笑顔で葉子ちゃんは私に携帯を戻す。
戻された携帯はもう呼び出し音が聞こえて、仕方なく耳に当てる。
どうしよう…。
バクバク煩い心臓。妙に手汗がじっとりとする。
お願い。出ないで!
そう願わずにいられなくて、でも『必ずかけてね』なんて言われてしまったから、その願いは虚しいだけの様にも思える。
ふっー、っとため息を吐いたとき、『はい…』なんて電話の向こう側から声がしたので驚いた。
『もしもし、どちら様?…』
電話の向こう男の人の声がする。
当たり前なんだけど、何か言わなきゃ。
「あ…あのー、小山課長?」
『嫌っ、俺は大橋だけど…』
えっ……。
そう電話の向こうの相手が名乗った途端、私は言葉を飲み込んでしまった。
ど…どういう事!?
私の様子がおかしいのに気付いた葉子ちゃんが小声で「どうしたの?」と聞いてきた。
そして、電話の向こうの相手も…、
『もしかして、中村か?…』
なんて言われてしまって、
えっ……。
益々パニックに陥り、頭の中は真っ白のになった。