秘密の時間
部長の第一声はこれだった。
私、泣きそう!?
葉子ちゃんの座っていた席に腰を下ろした部長は、そう言って私の顔を覗き込んだ。
って、それより、この現状どう乗り切ろう?
店員が部長に気付きオーダーを取りに来る。
「じゃあ、コーヒー」なんてそつなく答えて対応する、そんな大人な姿を見てしまったらまた胸はキュンとする。
「どうした。なんか聞きたい事、あるんだろ?」
いつもより若干甘目の部長の声。
何気なくテーブルの上にある部長の左手に目が言った。
あっ…、やっぱり!
葉子ちゃんが左手を気にしたのは、多分結婚指輪。
元々部長の実生活なんて知らない私達は、先輩方の噂から部長の生活を垣間見るしかなかった。
左手の薬指に光る指輪。
それは、とっても厳しい現実を私に突き付けた。